地元で「第九」を歌おう会 (2006.08.03) 吉村悦子
今年で十六回目の童謡祭が行われている一月の終わり、古賀市中央公民館のロビーで、人の良さそうな一人の中年男性が、チラシを配っていた。見れば、古賀市民オーケストラが12月に開く定期演奏会の曲目の、ベートーヴェンの交響曲第九番の合唱メンバーを募集するというものだった。
二十年前、福井県の敦賀市で歌った感動がよみがえってきた。夢中になって練習を重ねた日々、舞台の袖で出番を待つあの緊張感、高揚感。しかしあれからもう二十年経つ。
迷いに迷って三週間ほど経った頃、担当のSさんに電話してみた。すると「まだ申込者はなく、あなたが初めてです。」という。驚いた。蜘蛛の巣をただ張ればよいというのでもないだろうに。偉そうにそう思った。初めてだと聞いて出る気になった。
地元で「第九」が歌えるという魅力に引かれ、あちこちから歌好きが集まってきた。現在、募集人数の六十名になんとか足りているらしい。蜘蛛の巣は成功だった。
指揮は福岡教育大学の学生のK君。女声パートと初めての顔合わせのとき、テノールの素晴らしいのどを披露して我々を驚かせた。こういうのを今時の若者というのだろうか。おばさんたちは目をぱちくりするばかりだ。
だがこのK君、歌の指導のベテランN先生から時折やりこめられながらも、上手に間合いを取りつつ、自分なりの音楽を主張する。その姿には納得がいくし、好感も持てる。久し振りに音楽づくりの楽しさを共感させてもらっている感じだ。私たちも指揮の要求どおりに歌おうと努力する。「きっと、いい指揮者になりますよ。」、練習の後そう伝えたら、思いがけず照れていた。
親子ほども違う合唱メンバーと人懐っこい若者との熱っぽい練習はまだまだ続く。