ポーポ売り (2007.06.16) 森中登美子
ガーナでは、細い幹に20個近くの実をつけたパパイヤをよく見かけた。外側が濃い緑の時はサラダに、熟れて黄色っぽくなると甘い果物になる。地元の人はポーポと言う。
毎日通った語学学校の出入り口近くにはよく物売りがいた。火焔樹(かえんじゅ)の下はココナッツをリヤカーに満載したいかついおじさん。アカシヤに似た樹の下は、焼きとうもろこしを売るギョロ目のお兄ちゃん。形は大型のバナナ、味は芋のようなプランテーンを売る子持ちのおばちゃん。皆、繁った枝が屋根になるような木陰を陣取っていた。のーんびりとした顔つきで七輪の上のプランテーンやとうもろこしを焼いている。
ある時、木の陰で女性版、寅さんといった風貌のポーポ売りがいた。彼女は客の注文を受けると手際よくポーポの皮を剥き、縦割りにする。中の種をナイフの背でそっと柔らかく落とす。掌の上でスパッとウリを切るときのように縦割りにする。ビニール袋に入れる。あっという間に1個分が出来上がる。仕事も手早いがオシャベリも楽しかった。
子供が6人いるらしい。家に電気を引きたいが、今は旦那が失業中だとか。話はあちこちにとんだ。夢中になり手振り身振りで話すうちに右手のナイフを振り回していることもあった。話の内容は忘れてしまったが、なぜかゲラゲラと大笑いして終わった。
私が自宅用にと、2個買うつもりでと1000セディ(約13円)を払うと、彼女は袋に4個も入れてこう言った。「大丈夫、持っていきな。私は社長なんだからさ」。ニコッとして女寅さんは手渡した。
おかゆ売りやパイナップル売りなど、やり取りを充分楽しめる気風のいい社長が首都アクラにはあふれていた。
女寅さんと交わしてみたかったな。「江戸っ子だってね」。「アクラの生まれよ」。
木陰の商店街には安らぎも粋もあった。